木とふれあい、木に学び、木と生きる

木育は、豊かな森林と木材に恵まれた北海道生まれの新しい言葉です。
それは、子どもの頃から木を身近に使っていくことを通じて
人と、木や森との関わりを主体的に考えられる豊かな心を育むことです。

私は平成16年度、北海道と道民が協働で木育を生み出す「木育推進プロジェクト」のメンバーとして参画させていただきました。そして自分自身が「木のものづくり」をしながら北海道の木と森に育てられてきたことを実感しました。

この感謝の気持ちを、これからは「木のチカラ、森のチカラ」を多くの人に伝えることであらわしたいと思っています。

北海道生まれの木育は、民間「木育ファミリー」と行政「北海道の木育」が協働パートナーとしての関わりを保ちながら、それぞれ独自の取組みをすすめています。

☆木育ファミリーのホームページ(新)
http://mokuikufamily.jp

☆北海道の『木育』のホームページ
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/sky/mokuiku


人の心に木を植える

日本は「木の国」と呼ばれてきました。

私たち日本人は最も身近な素材として木と永くつき合い、それが日本の「木の文化」として受け継がれてきました。永い時間をかけて、身近な生活の中で人が木と作ってきた暮らしは、森林資源の保全と活用のバランスがとれた美しい森を育んできました。それは同時に、森の恵みに感謝して生きる日本人の心も育んできたのです。
近年 日本の森林と林業・木材産業は、たいへん厳しい状況のなかにあります。それは利便性や経済効果を追求してきた自らの社会の結果で、また子どもが加害者や被害者となっている事件や自殺の増加などは、人の心の衰えをあらわす社会現象でしょう。

木育とは 子どもをはじめとするすべてのひとが「木とふれあい、木に学び、木と生きる」取組みです。

mokuiku03.JPG

それは子どもの頃から木を身近に使っていくことを通じて、人と、木や森との関わりを主体的に考えられる豊かな心を育むことです。
子どもたちの心に「木が好き」「木と仲良くしたい」という素直な気持ちが芽生えるため、幼い頃から木を見て、触れて、感じて、考える機会を日常的につくることや、大人自身が良質な木の道具をていねいに使い続ける姿勢が大切です。そして、街路や公園などの身近な自然の中から樹木のことに興味がわき、楽しい時間を過ごした経験が親しみや慈しみの気持ちを深め、地域の森林と木材への関心につながります。食の分野では、子供たちの身体を健やかに育むための「食育」に関心が高まっていますが、乳幼児期には生活のなかで五感をとおして感性が育まれてゆきます。人が社会で生きてく時に大切な「思いやりや優しさ」は、自分自身がそれを経験し身近な人と共感することで、しっかりとした感性の土台となります。

私たちの日常の暮らしの中では、ほとんどのモノが短いサイクルで消費されてゆきます。それらは誰がどこで、どんな風に作ったものなのかが見えないため、愛着が持てません。木育は木との関わりを通じて、私たちが人と自然とモノとのつながりを実感するための取組でもあります。毎日使う木の道具や家具をじっくり選んだり、自分で作ったりすることは、それを使う時の楽しみも大きくしてくれます。
自然のなかで木は人に何も求めず私たちに恩恵を与えながら、穏やかな時間のなかで生きています。ですから木で作られたモノは、木が時間をかけてゆっくり成長したように、ゆっくり使っていきたいものです。
何世代にもわたって使い続けられてきた木の道具が語る言葉は、人の心に穏やかに届くでしょう。
木育には決まったスタイルや方法はありません。子供からお年寄りまでそれぞれが、うれしい楽しいと素直に感じられるやり方で、木や森と付き合えばいいのです。

森林には 経済財、環境財、文化財として3つの価値があります。

これらの価値はどれも欠けるところなく総合的であるほど、それぞれの価値も高まります。近年、その環境財としての価値が社会に認識され、地球環境を守るためには森林の保護が不可欠であるとの意識が浸透してきました。
しかし、森林を経済財として循環させる価値の普及がまだ不充分なため「木を伐って、木材として使い、苗木を植え育てる」仕組みと、環境のつながりが正しく理解されていません。また日本人と木の深い関わりの歴史について学ぶことは、文化財としての価値を再認識し未来を考えることにつながります。

100年先を見据えて森林づくりをすすめるように、一人一人の心の中に木を植え育てる「木育」にも長期的な視点が欠かせません。

そして心の木が美しい森に育つ時、日本の森も再生し、林業や木材産業が楽しくて夢のある仕事となるでしょう。
私たちが目指す地球の未来は、すべての生き物が共生して生きる持続可能な社会です。木育を「つながり」のキーワードとして、さまざまな活動のなかで人と人、人と自然との関わりを考えられる豊かな心が育まれてゆくことを願っています。


木育の本

木とふれあい、木に学び、木と生きる。北海道で生まれた「木育」のすべてをあますところなく紹介した、初の木育ガイドが刊行されました。
Amazon 書籍ページへ

第1章 木育って、なに?
「木育」とは、そもそもどういうものか。木育の考え方やめざす姿について概論的に紹介。

第2章 あれも木育、これも木育
木育の様々な具体的事例を紹介。 例)君の椅子プロジェクト、ねおす、岩見沢農業森林科学科、森の聞き書き甲子園、岐阜県森林文化アカデミー、木育ファミリーなど。

第3章 子どものころから木に囲まれて
子どものころから森や木と親しく付き合ってきた皆さんや、木の道具や家具への思いなどを紹介。 例)KEM工房の木のおもちゃ、四代にわたる森づくり(十勝の竹中林業)、築70年以上の現役木造校舎(弁華別小学校)、スウェーデンでの子育てなど。

第4章 森の中から生まれる旅
木が形を変えて道具になっていく姿などを紹介。 例)バットの旅(日高のアオダモが日ハム選手のバットに)、漆の旅など。

第5章 木や森と生きてきた人たち
長年、木や森と密接に関わってきた人たちの言葉を紹介。 例)木挽き職人(林以一)、馬そり職人(石塚八十一)、木彫作家(藤戸竹喜)、宮大工(大森健司)など。

第6章 対談 煙山泰子×西川栄明
共著者2人が、木育について語り合う。

第7章 私の木育宣言
立場の違う11人が木育宣言。 例)辻井達一、林美香子、佐藤孝夫(林業試験場道東支場長)、佐藤教誘(紋別・佐藤木材社長)、武田裕(岩見沢農業高校生)、長谷川敦子(NPO北海道子育て支援ワーカーズ代表理事)など。

第8章 きょうから木育365のヒント
煙山さんがすすめる365の木育ヒント