GWW(グリーンウッドワーク)

私がグリーンウッドワークと出会ったのは2010年の冬のこと。
名古屋の雑木林研究会に招いていただき、グリーンウッドワーク協会の久津輪さんとお会いして体験の時間に「煙山さんも やってみませんか?」と気軽に声をかけていただいたのがきっかけでした。

グリーンウッドワークは、地域の森から伐り出された生の木を、人力の道具を使って割ったり削ったりして、小物や家具をつくる木工です。 乾燥していない生木(グリーンウッド)を材料にして電動工具などを使わず人の力(グリーンな加工法)で、暮らしの道具を作ります。

木は最初、樹木として森の中で生き、二度目は木材として人と共に生きる。私はこの「樹木と木材のつながり」を実感できるシンボリックな木育活動としてグリーンウッドワークを普及させたいと思っています。 6月初旬、岐阜県立森林文化アカデミー(美濃市)のグリーンウッドワーク講座で「栗の木のスプーン作り」を体験してきました。KEM工房の自由研究を報告します。


栗の木のスプーン作り


朝9時から始まった講座の参加者は女性4人。ベテラン男性講師陣3人による特別講習です。 左より、NPO法人グリーンウッドワーク協会の加藤さん、久津輪さん、小野さん 使った材料は栗の木。名古屋から美濃へ来る途中にも栗畑があったので、きっと栗材が手に入り易いのでしょう。 まだ水分がかなり残っている生木(なまき)です。これを英語で「グリーンウッド」と言うのは、とても素直な表現だと思いました。 直径20センチあまりの丸太に、楔(くさび)を打ち込んで割っていきます。木製のハンマーがグリーンウッドワーク流です。 栗は木目が通っていて縦に割れやすいので、容易にきれいな棒状になりました。 四つ割りした丸太を、飛騨高山では昔から使われている特殊な刃物「万力(マンリキ)」で八角形にします。 ここまでで、作業時間は30分位。 私は大きめのサービング・スプーンを作りたかったので直径8センチ、長さ30センチ位の八角柱にしました。

いよいよ、グリーンウッドワークの独特な道具「銑(セン)」の登場です。木製の握り部分を両手でつかみ、手前に引いて使います。 刃の部分は20~30センチ。 見た目は重くて危険そうですが、正しく使うぶんには大丈夫。 これまで自分のお腹を削った人はいないとのこと。

これが「削り馬」。 英語でも「シェービング・ホース」と言います。 馬の背中部に乗って、首の部分で材料を固定して刃物で削ります。 馬が並んでいる様子に似ています。 準備完了。馬の首下の横木に足をかけ、前に押し出すようにして栗の木を固定します。座の位置や材料をちょうど良い位置に調整するのがコツ。 八角柱の角を削って、円柱になるように加工します。生木なので、ザクザクと気持ち良く進みます。 うまく伝わらないかもしれませんが「硬めのニンジン削り」のような感じです!
人力ろくろに取り付けるため、円柱両側の中心に直径5ミリほどの穴をあけで機械油を注ぎます。

こちらが、グリーンウッドワーク用「足踏みろくろ」。 材料にヒモを巻きつけ、踏み板を踏んで回転させ、ノミで削ります。ヨーロッパでは中世の頃から使われている道具。 木工旋盤でバットやコケシ、コマ、などを加工するのと同じ成形方法です。 上まである2本の支柱をつないでいるのが太いゴムヒモで、このゴムが伸縮する動きが回転力になります。ゴムの代わりに、樹木の枝のしなりを利用することも出来るようです。 下は、私がグリーンウッドワークろくろの新しい技術に真剣に取り組む様子。このように足踏みろくろは小学生から大人まで年齢に関係なく、初心者でも楽しめる体験です。

午前中にろくろで削った材料を、万力で縦に二つ割りします。 真ん中からパカッと割れました。 これでスプーン2本分。 材料の内部は、まだ湿っているので濃い色でした。 グリーンウッドワークのろくろで作るスプーンを作る方法は、通常とは違っています。 円柱のなかに、2本のスプーンが向い合せに入っているようなイメージで形をつくり、半分に割ってそれぞれをスプーン型に削ります。 半割りにした材の平らな面にスプーンの形を描き、削り馬に固定して銑で削ります。 丸いスプーンの頭の上に台形型に残しておいた部分は、削り馬に固定するためだったのですね。 外形が出来たら、台形型の部分をノコギリで切り落とし、スプーンの内側をノミで彫ります。 もうじき「栗の木のスプーン」の登場です。

森林文化アカデミーは緑豊かな美濃市にあります。 木のモノづくりには最高の場所ですが関東からの参加者にはチョッと遠い場所なので、4時半ころに作業を終えてティ・タイムにしました。 みんなの顔に、満足感 。。。。 これが、一日の成果。 それぞれのスプーンに個性があります。 実質6時間位の作業でした。まだ未完成ですが、最後の仕上げは各自ですることになりました。 スプーン作りは中級向けの講座です。 初心者には、こんな可愛らしい指輪作りもおすすめ。 なにより、だだ足踏みろくろで木を削る体験だけでも楽しいのです。自分の身体が、すごい動力になるのですから。 こちらは、かなり上級技術者向け「木のガラガラ」。3個のドーナツ・リングも一本の木から削り出しです。

札幌へ帰ってから、半日かけてスプーンを仕上げました。 講座から5日ほど経っているので少し乾いて、削るときの感触が変わっていました。緑の木から、少し茶色の木になったのでしょう。 裏側は人力ろくろで回転させて削った痕を残しておくことにしました。 重さを測ったら、63g。 *その後、2週間ほど乾燥して51gになり安定しました。12g(12ml)もの水分が含まれていたのです。 実際にスプーンとして使ったときに白木のままでは汚れが付くので、クルミのオイルで仕上げました。 クルミの実を布で包み玄能でたたいて、浸み出た油を塗ります。人力のグリーンな加工でやってきたので、塗装にもこだわりました。 「栗の木のスプーン」完成!! KEM工房のいつものモノ作りは、なるべく効率的に作る工夫をしてデザインしますが、これはその正反対のやり方。 本当に贅沢な時間でした。

 


ゴッホの子供椅子

 

 

 

 


あれや、これや

 

 

 


テオの椅子