赤い鳥

イチイ材で鳥を作りました。

これは10年ほど前、実家の庭の木を伐った時の材料です。私が小学生の頃から植えていましたが、30年以上経っても太さは直径15センチほど。

イチイは成長が遅く、太くなるのに時間がかかるので貴重な材です。愛らしい赤い実がつく針葉樹で、北海道では「オンコ」の名で親しまれています。

最近は日々の忙しさに追われて、「ものづくり」の楽しさを忘れがちなことに気がつきました。

「木とふれあい、木に学び、木と生きる」木育の活動のなかで、多くの人と出会うことができました。これまで関わりの少なかった環境系や行政の方々と語り合う時間は有意義で素晴らしいものです。自分の外にも中にも世界が広がり、さらなる可能性を見つけることができます。

それでも無性に、木に触りたくなる時があります。そんな時、目に留まったのがイチイの切り株でした。二股の枝の部分をY字型に切ったものです。以前にも、同じような枝材で4羽の鳥を作ったことがあります。

今回はスウェーデンから資料として手に入れたナイフを使ってみたかったのです。全長20センチ位、刃先に反りがついた両刃のナイフです。大柄な外人さんの手に合わせたサイズだからでしょうか?握りの部分が太くて丈夫な造りです。スウェーデン鋼で有名な国の刃物なので、使い慣れると良く切れました。

何にも考えず木を削っていると、時間を忘れます。
完成までの効率を考えれば別の加工法なのですが、木を削る楽しさを味わうための時間なので・・・。

緻密なイチイ材は、飛騨高山の一刀彫りにも使われる彫刻には最適な材料です。艶のある彫り跡を残して仕上げました。

半日ほどの作業時間だったのに、刃物を押した指の部分が赤く腫れてジーンと痛みます。

それでも満足!良い時間でした。

体長24センチ、高さ10センチの赤い鳥が生まれました。尾の部分は枝の形をそのまま活かして紙やすりで磨き、植物系のオイルで仕上げました。